やっぱり勝つためには、長時間練習は必要なのかしら?
確かに練習しないとうまくなれないし勝てないよ
でも肩や肘を故障する子が多いと聞くよ
そうだね。やり方に工夫は必要だね。むやみに根性論は必要ないと思うよ。これを機会に勉強してみよう。
子供たちが怪我無く、野球を楽しめたらいいのにね
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学童野球に長時間練習は必要ない
ネットの意見として、「少年野球に長時間練習は無意味です」があり話題になっています。少数派かなと思いましたが、医学及び科学的根拠を用いて長時間練習に対して警鐘を鳴らしている方が増えているのです。
『学童野球(学童は小学生)での故障者が多い』という話をスポーツドクターに聞いた後に、慶應大学野球部のコーチを務める上田誠さんは、学童野球の現場を見て回りました。その結果を、以下3点の問題にまとめられています。
1.パワハラまがいの強い言動での指導 ⇒外発的なモチベーション | 指導法が古く、自主性が育たない。下手すれば子供は野球嫌いになる |
2.土日、祝は朝から晩まで練習 | 練習時間が長い。子供の体への負担が大きい |
3.親御さんがお茶当番をする | 父兄の負担が大きい。入団への足枷になる |
今回は、2.の長時間練習について考えてみましょう。
長時間練習について、上田さんは「間違いなく、酷使が生じているはず。酷使するのは医学の知識がないから、罵声を浴びせるのは、スポーツ心理学の知識がないから」そして、「少年野球は最後の無法地帯、治外法権」と頭を抱えて嘆いています。
スポーツ庁も遅ればせながら、「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を発表しています。
ガイドライン | 内容 |
小学生 中学生 | ・練習日数と時間については、小学生では週 3 日以内、1 日 2 時間をこえないこと ・中学生に ついては。週 1 日以上の休養日をとること ・個々の選手の成長,体力と技術に応じた練習量と内容が望ましい |
高校生 | ・週当たりの休養日を平日1日、土日のどちらか1日の週2日と設定し、活動時間も長くとも 平日2時間程度 ・学校の休業日は3時間程度 ・長期休み中は、他の活動も行うため長期の休養時間を設ける |
学童に関しては、2時間/日を推奨されています。
至極がもたらす、至福のひととき。blissful coffee(ブリスフルコーヒー)なぜ野球は練習時間が長いのか
上田さんの恩師である慶應義塾大学野球部監督(当時)の前田祐吉さん(故人)の著書の中に「日本の野球に修行的要素が強い背景」が書かれています。「明治以降に輸入された野球は、スポーツ(本来は楽しむもの)という概念がなかった日本において武道に根を下ろし、野球道となった」ということです。
『野球には武道のように「型」を覚えるための「素振り」がある。そして野球のデフォルトは長時間練習。これは艱難辛苦に耐える力を培うためなのか? 加えて圧迫的な指導にくじけることなくがんばらねばならない』この考えが、日本のあらゆるスポーツに影響を与えていますね。
野球部員の長時間練習に対する感覚にずれが生じる構造(刷り込み)
上田さんは言う。「長時間練習をしたり、罵声指導を受けたりしなくても根性はつく。そもそも根性に対する誤解がある。人から強制され、それに耐えることでつくのが本当の根性ではないんです。うまくなりたいと思って、自分で工夫して練習する。それを地道に継続する。それが根性をつける唯一の方法だと思います」と訴えています。そうすることで、練習時間は効率よくなり、短くできる。
【ガイアの夜明けで話題】スーツに見える作業着「ワークウェアスーツ」伸びない選手の共通点
高校でも大学でも、伸びない選手の共通点はあります。
⇒小、中学校時代:上記の『やらされ練習』をしてきた選手。自分で考えない。練習とは指導者の言いなりにやるものだと思っている、刷り込まれている。(外発的なモチベーション)
*自分で考えて試行錯誤する経験を重ねると、成長も頭打ちにならない(内発的なモチベーション)
医学的にも小学・中学・高校は成長期
忘れてはいけないのは、小学生・中学生たちは大事な「成長期」にあるということ。
成長期の子供たちは、「骨端」と呼ばれる骨の端部分が非常に柔らかく、脆い状態。無理なトレーニングや酷使を続ければ、肩や肘、膝や踵の骨端が傷つき、それが野球を続ける上での致命傷にもなりかねません。少しでも体に違和感があったら休ませることをおすすめします。
中学生は成長期にあります。体を大きくする大切な時期に長時間の練習や投げすぎ、走らせすぎで体を酷使すると、成長ホルモンの出にくい体となってしまいます。
成長期の体は骨と筋肉の両方が成長するため、エネルギーをたくさん必要とします。
そういったことから、ハードな長時間練習は避け、選手たちに余力を持って家に帰ってもらうようにした方が良いです。そうすることで、適度な運動量プラス食事による十分なエネルギー補給、さらに質のいい睡眠によって成長ホルモンの分泌を促せるようになります。
大谷翔平選手は、高校時代に「骨端」と呼ばれる骨の端部分がまだあったため、投球におけるトレーニングを押さえています。それは佐々木朗希投手も同様に、この時期は成長期を十分に配慮して酷使しないようにしています。参考サイトはこちらです。
マイナビふるさと納税ゴールデンエイジとは
ゴールデンエイジとは、神経系(脳や脊髄・感覚器)が向上する時期を指し、その時期の運動経験が運動能力を左右するとまで言われています。
プレゴールデンエイジ(5歳~8歳ごろ)
この時期にいろいろな運動を体験し、動作に対する神経回路を作っておくことで、その後の運動能力を大きく伸ばすことができます。ただし、長時間集中力が続かない年代でもあるので、遊びながらカラダを動かすようなプログラムを短時間でいろいろ行うことが効果的。
ゴールデンエイジ(9歳~12歳ごろ)
神経系の発達は12歳でほぼ100%となり、さまざまな動作を習得するのがもっとも早い時期です。この時期は多くの動きを習得することで、その後の運動神経を飛躍的に伸ばすことができます。
神経系の発達をグラフにした「スキャモンの発達曲線」(グラフは筆者作成)
(グラフは筆者作成)
ポスト・ゴールデンエイジ(13~15歳ごろ以降)
ゴールデンエイジを過ぎると、身長や体重など骨格の成長が著しい時期に入ります。この時期は、骨格の急激な変化によって今までできていた技術や感覚にズレが生じ、思うようにカラダを動かせなくなったり、スキルをうまく発揮できない場合があります。
しかし、骨格や筋力の成長とともに反復練習を行うことで感覚は修正され、より力強く、すばやい動作が可能となります。
子どもは筋トレをしていいのか、しないほうがいいのか
子どもの筋トレは成長によくないと捉えられていることが多いでしょう。しかし実際のところ、決して悪いことではありません。正しい方法で行えば子どもの成長を助け、スポーツのパフォーマンスを向上させ、ケガを予防することができるのです。
成長に合ったメニューならばメリットが大きい
では、悪いとされているのはなぜでしょうか。理由の多くは「成長を止めてしまう」「筋トレによって関節を痛める」など、子どもの成長に悪影響を与えるとされる情報が広がっているためです。
筋トレによって成長が止まることはなく、むしろ運動によって成長ホルモンの分泌が促されるというメリットの方が大きいです。関節のケガについては、子どもの成長に合ったメニューを、正しい動作で行わせることが大切。
小・中学校までは自重トレーニングがおすすめ
筋トレというと、ダンベルやバーベルなど重りを持って行うウエイトトレーニングが一般的に思われますが、子どもが行う場合は、自重トレーニングがオススメです。
自重トレーニングというのは、自分の体重を負荷にして行うトレーニング方法のこと。年代別に適したトレーニング内容を見ていきましょう。
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小学生、とくに低学年の頃は「ゴールデンエイジ」と呼ばれ、運動に関わる神経系を発達させる重要な時期です。筋力トレーニングの効果はまだ低いものの、今後のスポーツ活動においての動作習得のひとつとして、筋トレをとり入れることは有効と言えます。
中学生
中学生は、身長や体重が急成長する時期です。急にカラダが大きくなり、運動の強度も上がります。筋力トレーニングを行うことで自身のカラダを支える力が身につき、ケガを予防することができます。
大きくカラダが変化する時期なので、トレーニング内容は細かくチェックし、無理のないようにメニューを組み立て直す必要があります。また、成長の個人差が大きいため、チームで筋トレを取り入れる場合には、各選手の負荷設定にも注意しましょう。
この時期は、まだ高重量のウエイトトレーニングは必要ありません。自重トレーニングや、軽めのダンベルを使った筋トレを中心にメニューを作りましょう。
高校生
身長や体重の急成長が落ちついてきて、筋肉の発達が著しい時期になります。この頃から、マシンやダンベル、バーベルなどの用具を使ったトレーニングをとり入れてみましょう。筋力や運動のパフォーマンス向上につながっていきます。正しい動作を身につけながら、負荷を高めていきましょう。
まとめ
野球には、輸入されてきた背景からも、日本の全スポーツの根底に、はびこった体育会系の厳しさが根強くあります。今では、スポーツ医学、心理学、脳科学等で長所、短所がはっきり分かってきています。
昔はこうだった、自分はこれで成長したなどがベースになっていると、時代から取り残されるだけではなくて、大事な子供たちを潰してしまうかもしれません。
常に勉強会などで、知識をつけて対応していく必要がありますね。