スローライフを楽しもう

トップアスリートの“心のSOS” 暖かく見守ることはできないのだろうか!

トップアスリートで心が病んでいる人が多くなっています。これは、トップだけに拘わらずスポーツをしているすべての人に当て嵌まります。

ヒロポン

本来好きであるスポーツが、苦痛に変わることがあるのですね。有名になるほど、苦痛も増えるようです。

何がスポーツをする人の心に闇を呼んでくるのでしょうか。


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競泳の萩野公介さんの苦悩

競泳のリオ五輪の金メダリスト・萩野公介さんは、メディアから『天才』と呼ばれることに、「それは自分ではない」と本来の自分との乖離(かいり)を感じていたようです。

萩野さんのメンタルヘルスの不調が目立ってきたのは、リオ五輪後に右ひじの古傷を手術してからです。思うような泳ぎができない中で、以前から感じていた自分の中の「乖離」が、広がっていくのです。

結果を残すほど乖離が生まれる

メディアは「天才・萩野公介」というものを作り上げました。

それを聞いた普通の人は「萩野公介は天才なんだ」と思い込みます。萩野さんの考える「天才」とは、大した苦労をしなくても速い人のことを想定しています。それは、自分とは違う。

自分は練習をいっぱいしてきたし、脳みそに酸素が回らないくらいのときも何回もありました。みんなそういう努力をしてきて、トップクラスになるのです。

そもそも『自分自身の性格』と『競技から求められる性格』との不一致があり、萩野さんの中ですごい葛藤があった。

『競技から求められる性格』とは、水泳の場合は特に「隣のレーンのやつには絶対に勝つ」や「他人を蹴落としてでも自分が絶対に1番になってやるんだ」という負けん気の強いほうが良い。しかし、『自分自身の性格』は、勝利にこだわる気持ちをあまり持ち合わせていなかった。その為、競技を続けていき結果を残せば残すほど、『人間・萩野公介』と『水泳・萩野公介』に“乖離”が生まれてきたのです。

萩野さんは「自分は『水泳・萩野公介』になりたかった。背伸びをしてでも、みんなに求められている姿になりたいとすごく思っていた。だけど、なれなかったんです」と言っています。

本来の自分を、見せてはいけないと思っていた

萩野さんは自分の本来の性格『人間・萩野公介』というものは見せてはいけない。『水泳・萩野公介』というものが、やっぱりみんなに求められているものなんだと自分に言い聞かせていました。

たくさんの人がサポートをしてくれているので、「ちょっとしんどいわ」と自分の気持ちを素直にあらわすことができない。それは、サポートをしてくれる人たちに対する冒とくみたいに、すごく失礼なことだと感じていました。

1人で抱え込まないことの大切さを痛感

東京五輪を控えていた2019年春、萩野さんは無期限の休養を宣言し、競技を離れました。

萩野さんは休養を決める際、コーチの平井伯昌さんに初めて自分の苦しみを打ち明けました。

お休みをします精神的なところがあるかもしれないです」と初めて人に伝えたんです。その一言を言ったときに平井さんから「ようやく本心を言ってくれたな」と言われました。周りは既に萩野さんの異変に気付いていたのです。


「自分は “スーパーマン” じゃなくてもいいんだ」というのをすごく強く感じた瞬間でした。「それでも生きていていいんだ」というふうに、なんかこう柔らかいというか安心感というか、そういった感情がすごく出ましたね。

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メンタルコーチに相談してみて、感じたこと

萩野さんはメンタルコーチに相談して、すごくよかったと言っています。何よりも楽しかった。

一番印象に残っているのが、「自分の人生は何が何割を占めているか」というのを書き出したんです。水泳が占める割合は何割か、プライベートとか趣味に求める割合は何割かという様に分けるのです。

また、今一番自分が何を求めているかを、競技だけじゃなくて人生そのものをグラフにしてまとめたんです。自分がやりたい人生を歩むために動いていこう。というような感じだったので、すごく楽しかったです。これは自分の内的評価を高めていく方法ですね。

オリンピックでメダルをとるかで、人生は大きく変わるとは思います。しかし、「メダルをとらなかったら死ぬ」とかそういう問題にはならない。今まで、レース前に諦めたことがいっぱいあって、自分自身で情けないと思う瞬間はいっぱいありました。でも、それも全部引っくるめて「自分」なんだなと、今はすごく思います。

人はなんでスポーツをするんだろう

萩野さんは大学院に入り、その研究室で年下の子に質問をされました。「オリンピックは、一人の人間として戦っているんですか? それとも日本を代表して戦っている気持ちなんですか?」って。純粋に質問してくれる子がいるわけです。自分自身、それはすごくうれしいなと思ったんです。今までだったら、「あの人はアスリートだから」という「スーパーマン」みたいな意味も含まれたところがありましたが、一人の人間として見てくれることはうれしいです。

萩野さんは、現役の最後のほうは「人はなんで泳いでいるんだろう」という問いを自分に投げ掛けながら泳いでいました。

人は幸せになるために生まれてきたと思っているので、「人間として生きるとは」ということを考えることが、アスリートのメンタルヘルスにもつながってくるんじゃないかなと思っています。今後もそれを勉強するつもりです。

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まとめ

萩野さんは自身の中の「本来の自分」「水泳の自分」とのギャップで悩み続ける。特に「水泳の自分」が不調に陥った時にいたたまれなくなっていく。好調の時は、ギャップはあるが気にするよりも、結果が出ていたので周囲の期待に対しては安堵していたのかもしれません

トップアスリートはスーパーマンと勝手に思っていましたが、その前に地道に努力を積み重ねていく人間なのです。

不調に悩んでいる人に対しては、できるだけ暖かく見守っていきたいですね。