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日本で一番すごいピッチャーとは? セイバーメトリクスで分析する

ヒロポン

往年の有名選手を含めて一番のピッチャーは、誰なんでしょうか?

最近、チームの力とは別に個人の力を算出する方法が出てきました。その方法を使えば、過去の人とも比較できますね。

ヒロおじ
ヒロポン

是非とも教えて下さい。今の選手の実力が分かって面白いですね。

『最高の投手』とは

野球データを統計学的に分析する「セイバーメトリクス」のスペシャリストたちの知恵を借りて、様々な角度からデータを徹底的に検証して「史上最高の投手」を割り出すことにしました

最高の投手の規定

下記4つの総合点で判断

  1. 奪三振力:K/9=奪三振数÷投球回数×9
  2. 安定感:K/BB=奪三振数÷与四球数
  3. 防御率の傑出度:当該選手の防御率÷該当年度のリーグ平均防御率×3・8 (リーグの平均防御率を3・80と仮定)
  4. チームの勝利への貢献度:WAR

<省く年代> 1950年代から1964年までの時期を「殿堂入り」として切り離す

理由:投手の分業制が進んでいなかった時代で、記録の数値が突出して高くなる傾向にある

<選ぶ基準> 年間で15勝以上を挙げている先発投手に候補を限定し、最高の数値を出した1年を採用

  理由:真のエース級に絞るため

上記の観点ごとに順位を決め、総合点から「最高の投手」を選びます。


ポチッとお願いします

4つの指標の一覧

それぞれに、興味深いデータが埋まりました。

順位奪三振力(K/9)安定感    (K/BB)防御率の
傑出度   
平均防御率を
3.80と仮定
勝利貢献度(WAR)
1野茂英雄
’90近鉄
10.99田中将大
’11楽天
8.93田中将大
’13楽天
1.355尾崎行雄
’65東映
11.08
2大谷翔平
’15日ハム
10.98上原浩治
’03巨人
8.43
6.64(通算)
ダルビッシュ有
’09日ハム
1.631鈴木啓示
’78近鉄
10.16
3江夏豊
’68阪神
10.97
奪三振:401
(プロ野球記録)
江川卓
’82巨人
8.17
24(四球数)
斎藤雅樹
’89巨人
1.721村田兆治
’79ロッテ
10.06
4則本昂大
’17楽天
ダルビッシュ有
’11日ハム
        堀内恒夫
’66巨人
1.802木田勇
’80日ハム
       
5杉内俊哉
’10SB
C・ルイス
’08カープ
岩隈久志
’08楽天
        高橋直樹
’79日ハム
6ダルビッシュ有
’11日ハム
山本和行
’82阪神
斉藤和巳
’06SB
村山実
’65阪神
7菊池雄星
’17西武
松坂大輔
’06西武
木田勇
’80日ハム
ダルビッシュ有
’11日ハム
備考直球と落ちるを
持っていた
3.5<:優秀(参考)
村山実(14勝)
’70阪神
1.276
0.98(防御率)
(参考)
杉浦忠
'59年 南海
12.93
(断トツ)

奪三振力  シーズン中の奪三振数を投球回数で割り9を掛けた数値「K/9」

 この項目でランキングに入る投手には共通する点があります。「速球」と「大きく落ちる決め球」を持っていることです。野茂投手のフォークは言わずもがなですが、大谷翔平投手は空振り率が3割を超えるスプリット(タテに高速で落ちる球)、4位の則本昂大投手も、直球と60km以上の速度差のあるカーブを持っています。

異彩を放ったのが3位の江夏豊投手('68年阪神)です。1968年、江夏投手の奪三振数は401。これは今もプロ野球の最高記録です。

「あの年、江夏は投手コーチからカーブを教わったのですが、指が短くて上手く曲がらず、打者の手元でフッと減速するフォークのような球になった。これと直球との組み合わせで、面白いように三振がとれました」と当時の阪神正捕手・辻恭彦さんが語っています。 何が効するかはわからないものですね。

投球の安定感  シーズン中の奪三振数を与四球数で割った数値「K/BB」

☞データ上、奪三振というのは『出塁リスク』が最も低く、価値が高い。一方、1つのアウトも取れず打者を歩かせる四球は最も価値が低い。この2つを組み合わせ、『三振がとれて、かつ四球も少ない投手』を高く評価する指標。メジャーでは、投手を査定する上で最重要の指標とされています。

一般に「K/BB」の値は3.5を超えると優秀とされていますが、1位の田中投手('11年)の値は8.93と、非常に高レベルです。

この指標で2位にランクインした上原浩治投手('03年巨人)は、プロ野球通算の成績でも歴代最高となる6.64という数値を残しており、「安定感の塊」と言われています。3位には江川投手('82年巨人)がランクインしました。

「江川は3年目から急にコントロールが良くなったように感じました」と元巨人の捕手・吉田孝司さんはこう振り返っています。

実際に、2年目の'80年に60四球を与えていた江川投手は、3年目の'81年には38個、今回ランクインした'82年には24個と、四球数を激減させています。当時は「省エネ投法」などと揶揄されていましたが、制球に注力することで成績は大きく向上したのです。

防御率傑出度  『当該選手の防御率÷該当年度のリーグ平均防御率×3・8』という式で算出されるもの

☞その年のリーグの平均防御率を3・80と仮定し、それにどれだけ差を付けたかを計算することで、シーズンごとの環境の差を補正し、選手の防御率を、年度を超えて比較することを可能にしました。

「安定感」に続き、ここでも1位の数字を残したのは田中投手('13年楽天)です。数値は1.355。

参考に、14勝のため除外しましたが、'70年の村山実投手(阪神)は1.276という傑出した数字を残しています。この年の村山投手の防御率は0.98。戦後、規定投球回数以上を投げて防御率0点台を達成したのは、村山投手ただ一人です。

勝利への貢献度  WAR

☞WARは、その選手が「代わりとなる選手に比べてどれだけチームの勝利に貢献したか」を示すものです。計算式は複雑なため割愛しますが、メジャーでは適正年俸の算出にも利用されます。数字が大きいほど貢献度が高く、レギュラーが平均的な活躍をした場合、2前後の値となります。

1位に輝いたのは日ハムの前身、東映の尾崎行雄投手('65年)です。

378回を投げて27勝を挙げ、WARの値は11.08。2位以下も25勝の鈴木啓示投手('78年近鉄)、17勝の村田兆治投手('79年ロッテ)と往年のエースたちが並びます。

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最高の投手

最高の投手の順位

下記に順位を示します。

  1. ダルビッシュ有(日ハム)・・・4指標全てで上位にランクイン。球速と制球を持ち『投手の完成形
  2. 田中将大(楽天)    ・・・安定感、防御率傑出度で2冠。『球史に残る存在
  3. 上原浩治(巨人)    ・・・トップレベルの制球力を誇る『コントロールピッチャーの完成形
  4. 野茂英雄(近鉄)    ・・・奪三振力は断トツ、制球が悪く安定感には欠ける。極端さが魅力

全て、うなづける内容です。ピッチャーを志す人の、目標になりますね。

栄えある1位は、勝利貢献度 7位、安定感 4位、奪三振力 6位、防御率傑出度 2位と、すべての指標でベスト10に入ったダルビッシュ投手です。

「彼は、もともと速球派でしたが、入団当初は与四球率が高く、制球力のない投手でした。しかし、年々着々とスキルアップし、変化球も増え、制球力も飛躍的にアップしました。まさに『進化する投手』です」と評価されています。

ダルビッシュ有投手が初めて規定投球回に達した'06年には64個の四球を与え、安定感は1.80に過ぎなかった。だが、'11年には36個まで減少、逆に奪三振は115から276まで増え、奪三振王のタイトルを獲得しています。

中日・立浪和義監督は、ダルビッシュを指して「球種、テクニック、頭脳、すべてが突出した現代野球最高の投手」と評しています。

上原投手は、奪三振力以外の指標のすべてで20位以内にランクインしています。「コントロールピッチャーの完成形」と言うことができるでしょう。

【ミラブルzero】シャワーじゃないシャワー

’64以前の大投手

'64年以前の「殿堂入り」メンバーたちを参考に順位付けしてみます。

●第1位:杉浦忠('59年 南海)・・・38勝「史上最強のアンダースロー」、 WARの値:12・93(断トツの数字)

*この年の南海は全88勝のうち4割超の38勝を、杉浦がたった一人で挙げています。おのずと、勝利への貢献度も跳ね上がります。

以下、一人でチームの屋台骨を支えていた大エースたちが続きます。「リリーフ」という概念がなかった時代にしか成立し得ないデータと言えます。

  • 権藤博('61年中日) ・・・35勝
  • 稲尾和久('61年西鉄)・・・42勝
  • 土橋正幸('61年東映)・・・30勝
  • 金田正一('55年国鉄)・・・29勝
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まとめ

ダルビッシュ有投手が、No.1になるとは意外でした。タイトルを取っているイメージが少なかったからです。表に一覧にして初めてすべての項目に入っていることに気づき、バランスの取れたアスリートだなと思います。だからこそ、36歳の年齢にも拘らず6年間の長期契約が取れるのでしょう。

そのダルビッシュ有投手が、今回のWBC期間中、特に合宿初日から参加してチームをまとめ、若手には惜しげもなく様々な助言をしていたことは本当に素晴らしいことでした。今後の若手選手の飛躍に期待したいと思います。

楽しみが増えて嬉しいですね。