スポーツ選手が最高のプレーをして実力を発揮する状態を「ゾーン」とか「フロー」と呼ぶことがありますね。
そうですね。日本では昔から、ある状況において信じられない力を発揮する状態を「火事場のばか力」という言葉があります。これは火事という緊急時に非常に大切な何十キロもあるタンスを、家の外に運び出したという逸話から来ているのです。
その信じられない力を意図的に発揮できれば、凄い選手になりますね。
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五輪などの大舞台でいかに、最高の力を発揮させるのか
ゾーン、フローと呼ばれる理想的な心理状態(ピークパフォーマンス状態)をいかにしてつくり上げるのか。オリンピックなどの大舞台で最高の力を発揮させるのか、という試みがスポーツ心理学の研究でなされてきました。
近年では、ゾーンには意図的に入ることができるといわれています。
パフォーマンスは、緊張や興奮のレベルが高すぎても低すぎても、低下します(下図参照)。そのためには、メンタルトレーニングの一種リラクセーションやサイキングアップを行うのが基本になります。
メンタル状態 | する事 | 具体的行動 |
緊張・興奮が強い場合 | リラクセーションによって気分を落ち着かせる | 1.呼吸法(腹式呼吸) 2.筋弛緩法 |
緊張・興奮が弱い場合 | サイキングアップによって気分を高揚させる | 1.呼吸法(アップテンポのリズム) 2.イメージトレーニング 3.音楽を聴く |
参考文献 『スポーツメンタルトレーニング教本 三訂版 』 日本スポーツ心理学会編 pp.109-113 大修館書店(2016)
上記に加えて行うとより効果的
- 目標設定
- 集中力
- セルフトーク
- プラス思考
- 試合に対する心理的準備
要約すると、メンタルトレーニングをすること自体が、ゾーンといわれる心理状態に入るためのプログラムになります。
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選手がどのような心理状態のときに、最高のパフォーマンスを発揮するのか理解する必要があります。
また普段の生活でも、最高のパフォーマンスを発揮する心理面や、その強化や準備の方法を理解しておくことは、ビジネス・受験・試合などで実力を発揮したいときに役立ちます。
では、ゾーン、フローと呼ばれる「理想的な心理状態」とはどのようなものなのでしょうか。
ゾーンに入る
- 楽しい、リラックス、気楽な気持ち、疲れない、時間の遅延を感じる
- まわりの動きがスローモーションに感じる、相手の動きが読める、体が自然に動く
- 集中、強気、プラス思考、自信、ほどよい緊張
- 結果を考えない、無意識、やる気、いけるという気持ち、いい心理状態
ゾーンに入ると、上記のような感覚を感じ、信じられないプレーができることを多くの選手が言っています。もし、いつでもゾーンに入ることができれば、『いつでも自分の実力が100%発揮できるはず』という考え方になります。
メンタルトレーニングとは、いかにして自分の実力を発揮させるかという目的のもとに、リラクセーションやサイキングアップ、目標設定、集中、イメージ、プラス思考、心理的準備などを組み合わせ、セルフコントロールをして、ゾーンに入る可能性を高くする方法です。
そのためには、ある特定の気持ち、心理状態をつくることが重要。多くのスポーツ選手がゾーンを体験した時に感じたものを具体的に紹介します。
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野球
高校3年の最後の夏の大会で、バットが届きそうもない外角のボールでも届き、苦手の内角カーブにもバットが出た。
1大会で4本の三塁打や1大会で7割近い打率を残した。
水泳
マイナスなことを全く考えなかった。
日本選手権の100メートル背泳ぎで(私が苦手としている種目なのだが)、怖いと思わず前向きで、かなりリラックスしていた。結果は日本新。この時、私はなぜか優勝できると思って泳いでいた。
ゾーンの感覚
ゾーンの感覚
疲れなかった 身体が軽かった 身体が自然に動いた 目覚めがよかった 朝食がおいしかった ウオーミングアップがいい感じ 焦りがない 勝てると思った まわりがよく見えた まわりの動きを把握していた 今まで感じたことのない力を感じた、成功のイメージ ミスがなかった 時間が短く感じた ボールが止まって見えた 観客を味方にできた まわりがゆっくり見えた 自分を中心にプレーが進む感じ 笑っていた 速く反応ができた 平常心 自分が自分じゃない感じ まわりの雑音が聞こえなかった 相手の動きがよく見えた 負ける感じがしない 勝つことがわかっていた ある種の快感があった 独特の興奮があった 不思議な気持ち コントロールができている感じ 無意識・直感的・自動的にプレーをしていた 何か肉体的な変化が起こった 誰かが手伝ってくれた感じ 近くが高揚する感じ 遊離感を覚えた
上記は、多くのアスリートたちが口にした言葉をまとめたものです。
みなさんも上記のような経験をしたことがありませんか。私は偶然にも、2度ほど経験があります。無意識で失敗の事など考えない、不思議な感覚でした。そして、この感覚はおかしいと思った瞬間に普段に戻りました。
自分が追い込まれた状態であるとか、交通事故などの危険を体験した状態で経験したという人もいます。自らの危険を感じて無意識・本能的に、または偶然にゾーンの状態に入ることができるのだと思います。
スポーツ心理学の研究で、自分の最高のパフォーマンスを発揮したことのある一流選手の79%が、このゾーンの状態を意図的につくれると答えています。このような研究の成果から、このゾーンといわれる理想的な心理状態をつくるためのプログラムが多くの国で試されています。五輪で勝つことを目的にメンタルトレーニングができあがってきたのです。
ゾーンへの入り方
スポーツ心理学として、理想的な心理状態に入れる要因・条件を次の10個にまとめました。それらがそろったときに、可能性が高くなると言われています。
- 試合前のプラン
- 自信と心理状態
- 身体的準備と心理的準備
- 興奮のレベル
- 自分のプレーをどう感じるか、自分の進歩をどう感じるか
- プレーへのやる気
- 環境と状況の条件
- 集中力
- チームプレーと相互作用
- 経験
この10要因が組み合わさり、総合的に作用して、ゾーンに入ると言うことです。
メンタルトレーニングでは心理的スキルをコツコツと強化・準備・トレーニングすることで、選手に最高のパフォーマンスを発揮させようと考えています。
一流選手の多くは、自分の経験の中で方法を見つけたり、メンタルトレーニングを学び活用することでコンスタントに実力を発揮できるようになっています。
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イチロー選手の打席でのバット回しのルーティンや、ラグビーの五郎丸選手の拝みポーズのルーティンは、多くの人が知るところです。一流選手から学び、自分の独自のテクニックを見つけることが大切なようです。
コンスタントに結果を出せるようにするために、メンタルトレーニングを行いましょう。
今までは本番で緊張などにより、普段の力が発揮できずに悔しい思いをしてきた人が多くいます。それが、納得のいく力が発揮できれば、仮に負けても現状の力不足がはっきり分かるので、素直に今後頑張ろうと思います。
納得のいく試合ができれば、悔いのない満足した生き方ができると思いますね。